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広がらないインスペクション(2024年3月追記)

広がらないインスペクション(2024年3月追記)

インスペクションは、建築士の資格をもつ専門家が中古住宅を点検し、依頼者に対してその結果を報告するサービスです。中古住宅の売買の場合、新築とは異なり、万一、柱や基礎など建物に問題があった時、個人の売主の責任となり、問題が解消されないことがあります。その中古住宅を安心して買うための一つの答えが、このインスペクションです。しかし、2018年4月から開始された「インスペクション制度の説明義務化」は、利用率が低迷しており、広がりを見せていません。その原因の一つが、媒介契約を締結したときに「既存建物の状況調査を実施する者のあっせん」に関する事項を記載した書面を交付することと規定されていること。買主が媒介契約を締結するのは、売買契約の直前であることがほとんどで、インスペクションを依頼したくても、そのタイミングがありません。この制度を普及させるためには、売主や媒介業者に対して義務付けを行うなど、もう少し踏み込んだ法律の改正が必要です。インスペクションを行うことで、補修の必要箇所や劣化状況が分かり、購入後のリフォームやメンテナンスの計画が立てやすくなるメリットもあります。中古住宅市場を活性化するためにも、国と不動産業者のあと一歩の努力を切に願います。

以下2024/03/19追記
なかなか広がらなかったインスペクションだったが、ここに来て様子が変わってきている。インスペクションの活用促進を定めた宅地建物取引業法の改正から5年が経過した2022年、国土交通省は、消費者と不動産会社に対するアンケートを行った。その結果、インスペクションの普及が進んでいることが分かった。アンケートの結果内容をみると、2016年の調査時では15.3%だったインスペクション実施率(売却経験者・戸建のみ)が、2022年の調査時では44.6%まで増加した。また満足度の調査については、『とても満足』と『満足』の合計が、78.5%となっており、インスペクションのメリットを経験者が十分理解していることも分かった。しかし、欧米諸国の中で、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアでは、細かい違いはあるが、基本的に売り主の義務となっており、これらの国々では当然普及率が例外を除き、100%となっている。日本でもインスペクションの普及が進む中で、今後の法改正も期待される。

出典:
・令和3年3月 国土交通省不動産・建設経済局不動産業課
「諸外国での不動産取引に係る新技術活用等の実態調査検討業務報告書」
・令和4年3月 国土交通省不動産・建設経済局不動産業課
「既存住宅取引におけるインスペクションに関する実態調査検討業務報告書」第3章 諸外国における既存住宅流通市場の概観

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